山梨医科大学雑誌 第11巻4号 095-103(1996)

<原著>通年性鼻アレルギー患者における可溶性インターロイキン2
レセプター(sIL-2R)および腫瘍壊死因子(TNF-α)について

後藤 領

抄 録:サイトカイン及びサイトカイン関連物質であるTNF-αとsIL-2R,また,好酸球の代表的な顆粒蛋白であるECPについて,通年性鼻アレルギー患者の鼻汁及び血清中濃度を測定し検討を加えた。ECPは患者の鼻汁中において,非アレルギー者と比較して有意に高い濃度で検出され,鼻症状の重症度もきわめてよく相関した。また,血清中ECP濃度も患者において有意に高値を示したが,重症度とは相関しなかった。患者の鼻汁中 sIL-2R濃度は,軽症,中等症,重症のいずれの群においても非アレルギー群と比較して有意に高濃度であったが,鼻症状の重症度とは相関しなかった。患者の血清中 sIL-2R濃度に関しても,非アレルギー群と比較してより有意に高濃度であった。鼻汁中のTNF-αは,軽症群のみが非アレルギー群と比較し有意に高値を示し,中等症や重症群においては有意な差を認めなかった。また,アレルギー群全体では非アレルギー群と比較して有意な差は認められなかった。しかし,鼻アレルギー患者の鼻粘膜に抗原を暴霧した結果,RT-PCR法による検討では,6時間後にTNF-α mRNAの発現が有意に検出された。このことはアレルギー性炎症の場である鼻粘膜において,TNF-αが産生遊離されている可能性を示すものと思われた。今回の検討により,IL-2やTNF-αをはじめとするサイトカインが鼻アレルギーの病態に密接に関与している可能性が示唆された。

キーワード 通年性鼻アレルギー,sIL-2R,TNF-α




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