山梨医科大学雑誌 第12巻1号 021-027(1997)

<原著>出芽酵母dlp1変異株は2ミクロンプラスミドのコピー数の増加を来たし,自食死における増殖活性の失活の遅れと寿命の短縮を示す

許 昭俊

抄 録:温度感受性細胞周期変異株であるcdc28細胞は制限温度38℃で培養すると,細胞増殖活性が自食機構の活性化に伴い低下し,4日目に完全に無くなる。この増殖活性の失活を促進する遺伝子を探索する目的で,cdc28細胞を化学変異剤EMSで処理し,制限温度下で増殖活性の失活が遅れるdlp表現型(delayed loss of proliferation activity)を示す変異体をスクリーニングした。その結果,3つ劣性変異体を単離し,dlp1〜dlp3と命名したが,この論文ではdlp1の特徴について述べる。dlp1変異体は四分子分析から単一遺伝子の変異に起因するものと考えられた。dlp1を寒天培地上で許容温度25℃で培養すると,3〜4日までは均一のコロニーであるが,7日間培養するとコロニーの形態から大小2種類(dlp1-lおよびdlp1-sと命名)に分かれた。dlp1-lのみdlp表現型を示しコロニーは大きく,赤く,辺緑が不規則であった。それに対しdlp1-sはdlp表現型を示さず,コロニーは小さく,白いままにとどまった。dlp1-l細胞のコロニーは適当な大きさにとどまることが出来ず,辺縁の細胞が栄養障害を起こして,死んでいくものと考えられた。単離したコロニーを再び培養すると,dlp1-l細胞からは,低率ではあるがdlp1-s型のコロニーを生じた。dlp1-sからはdlp1-lに変わることはなく,このエピジェネティックな変異は一方向に起こることがわかった。また,両者の寿命を出芽回数で測定すると非常に短いことがわかった。2ミクロンプラスミドのコビー数を測定すると,dlp1-lでは親株であるcdc28より68倍も高く,dlp1-sへの転換にともない半減することがわかった。これらのことから,核内遺伝子DLP1は2ミクロンプラスミドのコピー数を制御していることと考えられ,機序不明のエピジェネティック変化によりコピー数が半減し,細胞寿命は変化しないが.dlp表現型が回復すると考えられる。

キーワード 自食死,出芽酵母,寿命




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