山梨医科大学雑誌 第12巻3号 087-093(1997)

<総説>インフォームド・ディシジョン時代の医療

石崎泰雄

抄 録:1950年代から60年代にアメリカで誕生したインフォームド・コンセント法理は,日本の医療現場にも浸透し始めているようにも見える。しかし,その内容を,「医師が,患者に情報を与えて,患者から治療の同意を取り付けることである」と理解する医師も多いのが現状である。そうした誤解を招く原因は,この法理誕生の時代的制約とその言葉自体の持つ原初的意味にも存するのではないかと考える。先進諸外国では,判例・学説でも次第にインフォームド・コンセントに代わり,インフォームド・ディシジョン(情報開示による意思決定)なる用語が用いられ始めており,日本でもこの慨念・用語の提唱をしたいと考える。また,医療情報開示基準として,具体的患者開示基準が理念として優れていながらも,医療の現場での適用を考慮すれば,「混合基準」の採用が,より現実的ではないかと考える。

キーワード インフォームド・コンセント,インフォームド・ディシジョン,混合基準,具体的患者基準




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