山梨医科大学雑誌 第13巻2号 041-052(1998)
<総説>リハビリテーションにおける機能的電気刺激(FES)
市江雅芳
抄録:機能的電気刺激(FES)は,電気刺激を用いて生体の失われた機能を再建する新しい治療法である。特に,脳卒中や脊髄損傷の中枢性運動麻痺の動作を再建する運動系FESは,近年のコンピューターテクノロジーの進歩により急速に発展し,国内3大学の高度先進医療に取り上げられるなど,リハビリテーションの有力な手段になりつつある。脊髄損傷では,四肢麻痺上肢の把持動作や対麻痺の起立動作の再建が実用的な段階に達している。対麻痺の歩行再建については,種々の装具とFESを組み合わせたHybrid FESが,臨床応用の段階に入っている。また,不全麻痺の随意運動を改善する治療的電気刺激(TES)は,機能がプラトーに達している慢性期脳卒中片麻痺の歩行速度を改善させることが明らかになり,さらに筋萎縮性側索硬化症の筋萎縮を遅らせる効果があることも分かってきた。今後は,心臓ペースメーカーのような完全埋め込み型装置の登場が予想されている。
キーワード:機能的電気刺激、治療的電気刺激、四肢麻痺、対麻痺、片麻痺
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