山梨医科大学雑誌 第13巻3号 089-097(1998)

<原著>肝細胞癌に対する新しい治療戦略の開発に関する研究
―担癌患者の免疫抑制状態の改善をめざした免疫学的治療―

飯塚秀彦,山本正之,松本由朗

抄録:進行肝細胞癌患者の新しい治療法の確立をめざし,lymphokine activated kiiier cells (LAK)療法ならびにinterleukin-2 (IL-2)の持続肝動脈内注入療法(持続肝動注療法)の有用性を検討した。
 I. LAK療法:3例の男性の肝細胞癌患者を対象とし,肝動脈内留置カテーテルから,LAK細胞を,それぞれ1.0×10^8,2.8×10^8,3.5×10^8個投与し,さらに8時間毎にIL-2 3.8×10^5JRUを3回投与した。しかし,全例が腫瘍の進行(PD)を示し,肝硬変を合併した進行肝細胞癌患者に対するLAK療法には限界があると考えられた。
 II. Adriamycin-Lipiodol emulsion(ADR-Lip)の間歇投与を併用したIL-2持続肝動脈内注入療法:進行肝細胞癌患者24例を対象とし,IL-2(S-6820,塩野義製薬,大阪)の持続肝動注療法とADR-Lipの間歇的投与を17例(A群)に,ADR-Lipの間歇投与のみを7例(B群)に施行した。抗腫瘍効果はA群で著効(CR)4例,有効(PR)2例で奏功率は35.3%,B群ではPR 2例で奏功率は28.6%であり,奏功率,CR率ともに有意差はなかった。また,両群の累積生存率に有意差を認めなかった。一方,末梢血NK活性は治療開始 4-5か月後にはA群で53.1±13.8%と増強し,B群に比べて有意に高値となり,この時期に抗腫瘍効果を得た。しかし,8-9か月後には低下し,有意差は認められなくなった。同様に,A群においては末梢血IL-2 receptor陽性細胞の割合および末梢血LAK活性は 4-5か月後には増強し,8-9か月後には低下した。
 進行肝細胞癌患者に対する補助免疫療法における奏功率,累積生存率の改善には,末梢血NK活性,末梢血IL-2 receptor陽性細胞の割合,末梢血LAK活性を長期にわたり高値に保つ治療法の開発が必要である。

キーワード 進行肝細胞癌,インターロイキン2,養子免疫療法,NK活性,動注免疫化学療法




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