山梨医科大学雑誌 第13巻3号 099-105(1998)

<原著>看護学生の臨床実習における葛藤場面の認知と対処
―医学生との比較―

中村美知子,石川 操,福澤 等,窪田真理

抄録:同一医科大学の看護学生(3年生54名)と医学生(5年生50名)を対象とし,臨床実習体験を通して認知した各自の葛藤場面や対処法について,共通点と相違点を探るために調査を実施した。調査用紙はLuetzen K.等のMST(Moral Sensitivity Test,1994年)を一部改変して作成し,調査は各学年の臨床実習終了後,看護学生と医学生に同一調査用紙を用いて実施した。調査内容は葛藤場面と対処法に関する35項目を6カテゴリーに分類し,6つのカテゴリーは,対人関係における内省的態度,道徳性の構築,情を示す,自立,葛藤体験,医師の判断への信頼に関することであった。調査の結果,看護学生が高値で有意差を認めたのは,いつも相談相手がそばにいる,患者の自分に対する理解,価値観や信念が自分の行動に影響する,患者の意志を最優先する(p<0.01)など対人関係に関することであり,医学生は,主治医の判断への信頼などが有意に高値であった(p<0.00l)。看護学生と医学生の共通点は,人間関係の構築への関心,自立心,葛藤体験からの看護観(医療観)の構築などであった。各質間項目の男女による違いを比較した結果,看護学科の女子学生と男子学生間に有意差を示した項目はなく,医学科の女子学生と男子学生間で有意差があったのは4項目であった。4群間(看護学科と医学科の女性・男性)において,看護学科女子学生と医学科男子学生間で有意差を示す項目が11と最も多く,両群の差は学科間の相違に顕著な影響を及ぼしていた。

キーワード 看護学生,医学生,臨床実習,葛藤体験,道徳的感性




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