山梨医科大学雑誌 第14巻1号 007-016(1999)

<原著>ヒトプロスタグランジントランスポーター(hPGT)分子の
性質から得られたPG製剤に有用な構造の検討

土田孝之,金井直明,遠藤真一,加藤梧郎
前田秀一郎,上野 精,橋本敬太郎

抄 録:プロスタグランジン(以下PG)製剤の大きな問題は,血液中に短時間しか存在できないことにある。PG製剤の多くは肺でトランスポーターという膜蛋白によって細胞内に取り込まれ不活性化される。この不活性化には15-hydroxy-PG-dehydrogenaseを中心に多くの細胞内代謝酵素が関与する。したがって半減期の長いPG製剤を開発する上で効率的な方法は,多くの代謝酵素それぞれに対して抵抗性を与えるよりも,細胞内に取り込まれない構造を持たせることである。我々はヒトPGトランスポーター(以下PGT)cDNAをHeLa細胞に導入した安定発現細胞を作成した。
PGT安定発現細胞の3 H-PGE1(0.6nM)の細胞内取り込みは20分間でほぼプラトーに達した。この時点でPGT安定発現細胞はcontrol細胞に比べて,アルブミン非存在下で約150倍,5%アルブミン存在下で約80倍の3 H-PGE1を細胞内に取り込んだ。0.6nM PGE1のアルブミン結合率はほぼ100%である。それにもかかわらず,PGTがアルブミン存在下でもPGE1を取り込めることが明らかになり,生理的に大きな役割を果たしているものと推定された。この系を使いPGTを通過しない安定なPG製剤の構造を検討した。PG誘導体のPG受容体への親和性とPGTへの親和性を比較検討したが,その間に有意な相関は認められなかった。したがってPG受容体への親和性は高く維持しつつ,PGTへの親和性を低く抑えた半減期の長いPG製剤が開発可能であると考えられた。またPGTへの親和性を決定する重要な基はPG分子内の極性基であったため,その極性基の修飾が安定なPG製剤には必要であると思われた。

キーワード プロスタグランジントランスポーター,PGT,hPGT,プロスタグランジン受容体




本文は、編集委員会の意向によりインターネットには公開しておりません。図書館等でご覧ください。

Texts are not availavle on Internet.



目次・Contentsに戻る