山梨医科大学雑誌 第15巻2号 r13-r19(2000)
第32回山梨医科大学CPC記録:
3ヵ月かけて右葉全体に広がった器質化肺炎の1例
要 旨:症例は89歳の男性。既往歴に肺気腫があり,17年前に気胸を発症している。9年前に胸水貯溜に対して胸膜癒着術を受け,このときの喀痰培養で非定型抗酸菌が陽性で抗生物質の投与を受けている。平成10年10月,労作時の呼吸困難を主訴として入院。入院時,右S2の肺炎があり,その後肺炎は右上下葉に多発し,抗生物質投与に部分的に反応したが,3ヵ月後,呼吸不全で死亡した。剖検では,両肺に高度の肺気腫と胸膜の線維化を認めた。右肺には急性期の肺炎は認められなかったが,器質化肺炎から蜂窩状肺に至る新旧の肺線維症が認められた。結核病巣は見つからなかった。潜在癌として,肺に紡錘形細胞癌,盲腸とS状結腸に腺癌が見つかった。本例は肺気腫で荒廃した肺に発症した気管支肺炎の治癒吸収が阻害されて起こった器質化肺炎と考えられ,急速に進行した肺の線維化が注目された。
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