山梨医科大学雑誌 第16巻2号 039-049(2001)

<原著>硬膜外大量フェンタニール麻酔の血漿カテコラミン
および循環動態に及ぼす影響

田中 行夫,野中 明彦,松川 隆,熊澤 光生

要 旨:胃切除手術患者14 名を硬膜外大量フェンタニール投与群(F 群)7 名と局所麻酔薬投与群(L群)7名に分け,各々投与前後の血行動態と血漿カテコラミン濃度,血清コーチゾール濃度さらに血清ヒスタミン濃度の変動を比較検討した。硬膜外カテーテルをTh9 −11 より挿入,留置し,硬膜外への薬物投与は,F 群でフェンタニール0.01mg ・kg−1を,L群は1%リドカイン10mlを注入し,投与前後と手術開始90 分後まで各パラメーターを測定した。麻酔の維持は,両群共笑気66%と低濃度のイソフルレンを併用した。血漿エピネフリンは,L 群で硬膜外投与後有意に低下した。また硬膜外投与後90 分,120分で投与前に比較し有意に上昇した。また,F 群で手術開始15分後に投与前と比較し有意に上昇した。血漿ノルエピネフリン濃度は,両群共麻酔導入全経過を通じて導入前と比較し有意に上昇した。L群では90 分,120 分値で投与前と比較し有意に上昇した。血清コーチゾールは,L 群で投与120 分値で麻酔導入前と比較し有意に上昇した。血清ヒスタミン濃度は,投与前後に有意な変化を認めなかった。血行動態変化としてL 群で血圧,脈拍,全身血管抵抗共に硬膜外投与後,有意に低下した。
硬膜外大量フェンタニール麻酔では,循環抑制が認められなかった。また,血漿カテコラミン濃度を低下させないことからリドカインなどの局麻薬のように交感神経遮断作用を有しないものの,リドカインに比較し,長時間の疼痛遮断作用を持ち血清コーチゾールも上昇させないため局麻薬使用による硬膜外麻酔と比較し,安定した麻酔維持が可能であり,虚血性心疾患患者や侵襲度の大きい手術の麻酔管理に有用な麻酔法と思われた。

キーワード麻酔,硬膜外フェンタニール,カテコラミン,循環動態




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