山梨医科学雑誌 第18巻3号 047-059(2003)

<原 著>
ヘッドスペース固相マイクロ抽出/ガスクロマトグラフィー
によるシアンの分析と剖検事例への応用

竹 川 健 一,木 戸 啓,大 矢 正 算

要 旨:固相マイクロ抽出(SPME)法により血液中からシアンを抽出し,ヘッドスペース−ガスクロマトグラフィー(GC)で分析する新たなシアンの分析法を開発し,剖検材料中のシアン分析に応用して有効性を確認した。バイアル瓶に血液0.5 ml,シアン標準液0.1 ml,内部標準(5 ppmアセトニトリル水溶液)0.2 ml,無水硫酸ナトリウム0.3 gおよび50%リン酸0.2 mlを加え,50ーCで加温しながら65 mmCarbowax-Divinylbenzeneファイバーで45分間吸着したのちGC注入口で30秒間熱脱離してGC分析を行った。検量線は良好な直線性(シアン濃度0.04〜1.0 mg/ml,r 2=0.998)を示し,検出限界は0.02 mg/ml(CN−, SN=3),回収率は3.02〜4.06%でありRSDは6.8%以下であった。シアンピークの日内および経日内変動のRSDは,7.1%以下と9.2%以下であった。シアン添加実験での本法と吸光光度法の測定値は一致(r 2=0.999)した。シアン投与ラットの血中濃度測定でも両法の測定値はほぼ一致した。シアン中毒死と疑われる男女の剖検試料中シアンをGC-MS法で確認し,本法と吸光光度法で定量分析を行った。男女の血中シアン濃度は致死レベル(3〜5 mg/ml)以上を示し,胃内容中濃度はより高濃度を示したことからシアン化合物の服用によるシアン中毒死と判定された。両法の測定値はほぼ一致(r 2=0.994)し,本法は実務において利用価値が高いことが証明された。

キーワード シアン,固相マイクロ抽出,ヘッドスペースサンプリング,ガスクロマトグラフィー,シアン中毒死



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