山梨医科学雑誌 第19巻1号 001-009(2004)
<総 説>
エピジェネティックス医学
久保田 健 夫
要 旨:医学分野において遺伝子研究が盛んになり10年が経過し,現在その限界も見えてきた。すなわち病気の原因遺伝子がわかっても病態は不明のままである。遺伝子で始まる病態の理解が今後の課題となっている。この課題を克服すべく始まった学問分野がエピジェネティックスである。エピジェネティックスとは生体内の遺伝子発現調節,より具体的にいうと染色体上の遺伝子調節メカニズムを明らかにする研究分野である。近年,遺伝子DNAのメチル化とそれに関連する蛋白の挙動,染色体構造の変化の過程がわかってきた。同時にこの過程における欠陥に起因する疾患があることもわかってきた。先天異常症の研究で始まったエピジェネティックス医学の考え方は,がんの病態解明研究を経て,さらに精神疾患の解明研究に応用されてゆくであろう。
キーワード エピジェネティックス,遺伝子発現制御,メチル化,メチローム,クロマチン
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