山梨医科学雑誌 第19巻3号 079-082(2004)
<総説>
Transforming Growth Factor- b(TGF- b )
シグナル伝達の制御機構と疾患
中 尾 篤 人
要 旨:Transforming growth factor- b (TGF- b )は多彩な機能をもつサイトカインとして知られており,細胞増殖,アポトーシス,分化,細胞外マトリックス産生等の制御作用を介して,癌や線維化,免疫,発生など幅広く生命現象一般に関与している。細胞の種類や分化段階などに応じ,あまりに多彩な作用をTGF- b がもつため,このようなバラエティーに富んだ作用がいったいどのようにして惹起されるのかということがこの分野の最大の関心事であった。しかしながら1996 〜97 年にかけて,TGF- b の主要な細胞内シグナル伝達経路であるSmad 経路が同定されて以来,この多彩な作用の基礎となる分子メカニズムが次々と明らかにされつつある。現在では,Smad 経路を中心として,さらに細胞内で数多くのシグナル促進因子,抑制因子が時間的/空間的に協調することによって,ある特定の細胞におけるTGF- b シグナルの最終的なアウトプットが規定されると考えられている。このようなTGF- b 作用の制御メカニズムを理解することによってTGF- b シグナルの制御分子を標的とした薬剤の開発につながり,TGF- b が関係する数多くの疾患(癌/線維化/免疫疾患など)の根本的な治療が将来見いだされることが期待される。
キーワード transforming growth factor- b (TGF- b ),シグナル伝達,Smad ,癌,線維化
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