山梨医科学雑誌 第21巻3号 039-045(2006)
<総説>
一次線毛を巡る様々な考察
竹 田 扇
要 旨:線毛は主要な細胞小器官の一つであり,主に細胞運動に関係すると考えられてきた。気管支上皮,卵管上皮,精子などが線毛をもつ代表的な細胞である。これらの線毛は従来型線毛(conventionalcilium)と呼ばれ,線毛内には軸糸(axoneme)と呼ばれる微小管と分子モーターの複合体が存在する。微小管は中心に2 本,周囲に9 本という形をとり一般に9+2 と呼ばれている。一方,以前から不動線毛と考えられてきた線毛として一次線毛(primary cilium)が知られており,その軸糸構造は9+0 で中心の微小管を欠く。このカテゴリーに属する線毛は,網膜視細胞,腎臓近位尿細管上皮細胞などに存在し,細胞外部環境を感知するアンテナであると考えられてきた。ところが近年,著者等はマウス初期胚のノードと呼ばれる領域に一次線毛が存在し,これが回転運動を行い,局所での形態形成因子(morphogen)の濃度勾配を形成することでからだの左右を決定する事を見いだした。現在,体の様々な細胞に存在する事が確認されている一次線毛は,このノードの線毛の様に未だ解明されていない重要な機能を担っていると考えられる。
キーワード 一次線毛,神経細胞,左右非対称,細胞内輸送,シグナル伝達
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