山梨医科学雑誌 第23巻2号 021-031(2008)
<総 説>
認知神経科学よりみた情動/認知機能の発達
−発達障害を理解するために−
相 原 正 男
要 旨:脳における情報処理システムは,認知処理背側経路と情動処理腹側経路の二重のシステム構造になっている。情動処理と認知処理が統合する脳領域は前頭葉と考えられている。認知処理系である背外側前頭野で判断,計画が立案され,情動処理系である前頭葉眼窩・腹内側部で生物学的,社会的評価を受ける。ヒトの社会的適応において,認知機能が文脈(context)を形成し,情動機能がバイアス(bias)として関わることで,将来の目的に向けて判断,計画,行動するために必要な実行機能(executive function)が作動して意思決定がなされ行為に進展するものと考えられる。近年,これらの高次脳機能を非侵襲的に評価できる認知神経科学(cognitive neuroscience)という学際的な研究分野が発展してきており,健常小児や発達障害児の脳内メカニズムが急速に解明されてきているので紹介する。
キーワード 情動,認知,前頭葉機能,発達障害,認知神経科学
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