山梨医科大学雑誌 第3巻2号 039-046(1988)
<総説>ヒ卜骨肉腫の実験モデルとしてのべリリウム骨肉腫とハムスター骨肉腫について
福島 博,赤松功也
抄 録:実験モデルは所詮はモデルであってヒトの疾患と同じということは有りえない。しかし,動物実験は医学の研究におけるもっとも重要な手段の1つである。著者は骨肉腫の実験モデルについて概説するとともに著者が実際に使用した家兎べリリウム骨肉腫,ならびにハムスター骨肉腫について検討を加え報告した。骨肉腫実験動物としては現在までに犬,家兎,ラット,マウスあるいはハムスターなどが報告されている。1955年以来1979年まで著者らは骨肉腫の実験モデルとして炭酸べリリウム(以下,Beと称する。)投与により家兎に骨肉腫を発生させ,1979年以降はハムスター骨肉腫について検討を加えてきた。Beの注入による骨肉腫の発生頻度はBeを注入した家兎のうちで18.5%またBe注入終了後も生存しつづけた家兎のうちでは62.7%であった。また,骨肉腫の平均発生時期はBe注入開始後14力月であった。そして,肺転移率は骨肉腫が発生した家兎では100%であった。一方,ハムスター骨肉腫の移植成功率は約95%で肺転移形成率は約70%であった。 Be家兎骨肉腫とハムスター骨肉腫の両者とも病理組織所見はヒトの骨肉腫に極めて類似し,高頻度に肺転移がおこる点も似ていた。これらは実験骨肉腫として好ましい条件を供えているといえるが,Be骨肉腫では作製までに長期間を要し,発生率も低く,動物として雑系であることが欠点であった。これに比較してハムスター骨肉腫は継代移植が容易であり,扱い易い実験モデルといえる。
キーワード 骨肉腫,実験モデル,ハムスター,べリリウム
Beryllium Osteosarcoma and Hamster Osteosarcoma for
Experimental Models of Human Osteosarcoma
Hiroshi Fukushima and Noriya Akamatsu
We examined two kinds of animal osteosarcoma. One is the rabbit osteosarcoma induced by bone marrow injection of beryllium carbohydrate and the other is hamster osteosarcoma, which was originally induced by papovavirus injection, maintained by subcutaneous transplantation of tumor mass. The characteristics of these osteosarcomas are very similar to those of human osteosarcoma. Injection of beryllium carbohydrate was carried out on 173 rabbits. The osteosarcomas were formed in 32 (18.5%) rabbits, and the mean time of occurrence was 14 months after the beginning the beryllium injections. Lung metastasis appeared to all rabbits with osteosarcoma. The subcutaneous transplantation of hamster osteosarcoma was successful in 95% of all animals. The frequency of lung metastasis was bout 70%. We conclude that experimental osteosarcoma using hamsters was more successiveful than using rabbits.
Key words: osteosarcoma, experimental model, hamster, beryllium
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