山梨肺癌研究会会誌 第11巻1号 015-018(1998)

気腫性肺嚢胞に隣接して発症したため診断が遅れた腺扁平上皮癌の1例

坂 晶、虎走英樹、有泉憲史、橋本良一、池田華子、岩井和郎、三俣昌子

要旨:症例は68歳男性。左下葉気腫性嚢胞を認めfollow中、左下肺野に異常陰影を指摘され、原発性肺癌が強く疑われ、左肺下葉切除・R2aリンパ節郭清術施行。poorly differentiated adenosquamous cell carcinomna. p-T2N2M0(p2,n2) Stage III Aだった。
 気腫性肺嚢胞と肺癌の関連について、肺癌罹患率は健常人の32倍と報告され、発生部位は右上葉、肺葉の中では特に末梢部に多いと報告されている。組織型は、腺癌が半数以上を占め、腺扁平上皮癌は希である。発生機序については、1、癌による肺胞の破壊と、チェクバルブによる嚢胞の形成。2、肺嚢胞発生後に、肺胞上皮の扁平上皮からの化生、嚢胞壁のはん痕からの発癌、嚢胞内への癌原物質の停滞貯留による発癌。との報告がある。また、Woodringらは、 嚢胞壁4mm以下--92%が良性疾患、5〜15mm--49%が悪性疾患 15mm以上--95%が悪性疾患と報告しており、早期発見、診断、治療の一つの手段として有効と思われる。
 初回受診時、気腫性肺嚢胞壁の肥厚を認めた本症例は、早期に悪性疾患を念頭におき、精査を行うべきだったと反省させられた。




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