山梨肺癌研究会会誌 第11巻1号 036-040(1998)

病理組織学的に診断困難な症例の細胞診断学的アプローチ

中澤久美子、弓納持勉、石井喜雄、早川直美、西川圭一、石原 裕、山根 徹、三俣昌子、加藤良平、尾崎由基男

要旨:組織型の推定が困難であった2症例を、細胞診材料を用いて細胞像および免疫細胞化学的検討から組織型推定のアプローチを行った。症例1は、65才の男性。胸部X線にて右下肺野に腫瘤性の陰影が認められた。細胞診では、裸核状の細胞が目立ち、核の引きつれた所見やクロマチンの所見より小細胞癌を考えたが、集団の一部に腺管様構造や核の偏在傾向が認められ、低分化腺癌も否定できない所見であった。免疫染色では、サーファクタントアポプロテインAのみが陽性となり、肺原発の低分化腺癌と診断された。症例2は、72才の男性。胸部X線こて左上肺野の異常陰影が認められ、CTより縦隔腫瘍と診断された。腫瘍マーカーはAFPが異常高値を示していた。細胞診では、ロゼット様配列が認められカルチノイドが考えられた。免疫染色では細胞材料でAFP、N-CAM、NSEおよびシナプトフィジンが陽性となり、カルチノイドと診断された。以上より、細胞診において免疫細胞化学的手法を用いることにより組織型の推定が可能であると考える。


Key words:immunocytochemistry、cytology、lung cancer、mediastinal tumor


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