山梨肺癌研究会会誌 第12巻2号 71-74(1999)

嚢腫様の発育をした胸線腫の1例

宮内善広,高橋 渉,福田尚司,大澤 宏,鈴木章司,保坂 茂,吉井新平,多田祐輔,西川圭一,石原 裕

要旨:嚢腫様の発育をした胸線腫の1例を経験した。症例は73歳、女性。胸部CT検査では、右前上縦隔に境界明瞭、内部ほぼ均一な10×5cm大で、Gaシンチの集積しない壁不整を伴う嚢胞性病変を認めた。合併疾患もなく、胸線嚢腫あるいは胸線腫として、腫瘤を含む拡大胸線摘出術を行った。腫瘤は嚢胞性で、被膜に覆われており、周囲への浸潤はなく、内容はゲル化し、多胞性で液状を示さなかった。病理組織学的には、嚢胞壁が上皮細胞優位の胸線腫細胞で構成され胸線腫細胞や胸線組織が内容物の産生に関与して、比較的短期間に大きな嚢胞を形成したものと考えられた。本症例のような嚢胞性胸線腫は、術中所見でも胸線腫との認識が困難と思われ、周辺にも胸線組織が存在したことから、前縦隔腫瘍に対しては、嚢胞性病変であっても、拡大胸線摘出術の必要性が痛感された。

Key words:嚢胞性胸線腫、拡大胸線摘出術



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