山梨肺癌研究会会誌 第13巻2号 036-044(2000)
原発性肺小腺癌の病理学的検討
−Focal P(低分化腺癌部分)の重要性−
小山敏雄,川崎朋範,千葉成宏
【要旨】 腺癌の縮小手術に病理診断がいかに有効に貢献できるかを最大径3cm以下の腺癌について手術時の転移の状況をもとに様々な組織学的パラメーターなどにより検討を加えた。
最大径3cm以下の転移例7例のうち6例は少なくとも一部に低分化な成分がみられた。また、1例は papillary adenocarcinoma(野口F型)であった。そこで最も低い部分での分化度により分化度別の転移率をみると、3cm以下では高分化24例に1例も転移はみられなかった。細胞型別にみてみると、杯細胞型とII型肺胞上皮型では4cm以下のすべての例(10例)において転移を認めなかった。3cm以下にするとクララ型で15例中2例転移をみたがいずれも Focal P(低分化腺癌部分)を有していた。野口分類にあてはめると、A, B型では転移はなかったが、C型においても14例中1例も転移がなかった。野口C型には Focal Pが含まれている可能性があるので、それをC型から除くことによってさらに縮小手術の適応を拡大できる可能性が高まってきた。胸膜浸潤度により検討を加えると、低分化を除けばpO, p1であれば充分縮小手術が可能であると思われた。
低分化腺癌やpapillary adenocarcinomaのように肺胞破壊性の強い組織型は転移しやすく、肺胞置換型は転移しにくいことが明らかにされ、細胞型も加えて評価すれば、縮小手術の評価は充分可能であると考えられた。ただし、最大径3cmを越えるものは縮小手術には適さないと結論した。
【key word】 小肺腺癌,Focal P,細胞型(腺癌亜型),縮小手術
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