山梨肺癌研究会会誌 第13巻2号 045-051(2000)

超高齢者肺癌患者の放射線治療

田中史穂,栗山健吾,大西 洋,小宮山貴史
植木潤子,荒木 力
石原 裕,西川圭一

目的:近年、高齢者の悪性腫瘍患者は増加しているが、高齢者に対する放射線治療の効果、副作用と予後との関係は明らかでなく、その意義は明確でない。今回、80歳以上の肺癌患者における当院の放射線治療の効果・副作用・予後について検討した。方法:1983年4月の開院から1999年12月までに当院において放射線治療をした80歳以上の肺癌患者20名(男牲17名、女性3名)を対象とした。年齢80-85歳(平均82.1歳)、PS(Kamofsky score)80%以上は10名、70%以下は10名であった。病期はIIB 3名、IIIA 7名、IIIB 5名、lV 5名、組織は扁平上皮癌12名、腺癌6名、小細胞癌1名であった。照射目的として、根治目的は8名、姑息目的は12名であった。照射野は、腫瘍の一部のみを含んだものが7名、腫瘍全体を含んだものが11名、予防的リンパ節領域まで含んだものが2名であった。照射と化学療法同時併用したものは3名であった。結果:照射の完遂は15例であり、完遂率75%であった。PSが80%以上では全例完遂可能であったが7O%以下では完遂率50%であった。治療効果は、CR、PRあわせて15名中12名にみられ、奏功率80%であった。完遂例の1、3年生存率は、それぞれ40%、13%であり、有意に完遂例の方が予後は良好であった。完遂症例の病期別および治療効果と生存率の閥係では、有意差はみられなかった。根治照射例における照射野別の生存率では、腫瘍のみ照射したものと予防的範囲まで照射したものに有意差は見られず、また、緩和症例での照射野別の生存率でほ、腫瘍全体に照射した症例に比べ、腫瘍一部のみに照射したものは予後が有意に良好であった。化学療法同時併用した症例では予後不良であったのに対し、照射単独例では良好であった。放射線肺炎および食道炎が中等度以上みられた症例では有意に生存率が不良であった。結論:80歳以上の患者の放射線治療では、副作用も十分考慮し、治療針画をたてることが重要である。とくに根治照射するときは、照対野をなるべく小さくする工夫が必要である。

Keywords: Radiation therapy, Lung cancer, Elder patient



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