山梨肺癌研究会会誌 第14巻2号 107-112(2001)

当科における
肺癌胸腔内洗浄細胞診陽性症例の検討

喜納五月、高橋 渉、井上秀範、横須賀哲哉、松原寛知、保坂 茂
鈴木章司、大沢 宏、明石興彦、吉井新平、多田祐輔

要旨
胸腔内洗浄細胞診(Pleural Lavage Cytology,以下PLC)は現行のstaging factorには含まれていないが、陽性例と陰性例を比較すると陽性例は予後不良とされる。今回PLC陽性例の潜在的悪性度を把握し、本法の意義を検討した。対象は1992年3月以降原発性肺癌手術開胸時、肉眼的に胸水が認められない症例に対しPLCを施行した181症例中陽性例10例(5.5%)である。組織型は全例腺癌であり、このうち5例はリンパ節転移を認めないI期であった。2例に癌性胸膜炎による再発が認められた。PLC陽性例はハイリスクグループでありT4にup stageするのが妥当との報告が散見されるが、なかには長期生存例もある。今回の検討では5年生存率は45.7%であった。PLC陽性症例は癌性胸膜炎の再発が比較的高いことからその初期像と捉える考え方もあるが、予後の推測においてはT4(VB)とするほど予後は悪くなく、Tを1つ上げる程度が妥当と考えられる。

key words:原発性肺癌、胸腔内洗浄細胞診、PLC、蒸留水浸透療法



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