山梨肺癌研究会会誌 第15巻1号 008-016(2002)

胸腺癌の1例および新WHO分類についての考察

川崎朋範、小山敏雄
羽田真朗、千葉成宏

要旨
比較的稀な胸腺癌を経験した。組織学的には、上皮細胞の核異型が比較的目立つも、機能性と考えられるリンパ球が混在するatypical thymoma (新WH0分類type B3)様の部分もみられたが、間質に目立つ線維増生を伴いつつ胞巣状に浸潤する部分では、細胞異型が強く、コメド状の壊死もみられ、胸腺特有の細胞構築はなく、新WHO分類のthymic carcinoma (type C thy-moma)に相当すると考えられた。さらに細分類のepidermoid carcinomaに相当し、大部分はnon-keratinizingであるが、一部では小角化巣も認められた。免疫染色では、シナプトフィジンが部分的に陽性で、NCAM(CD56)も一部陽性となり、神経内分泌的な性格が確認された。文献的に、胸腺癌はシナプトフィジンやクロモグラニンが約半数に陽性で、胸腺腫ではたいてい陰性となることに一致する。
胸腺上皮性腫場は、今日に至るまで様々な分類が提示され、長い間混沌としていたと言える。しかし、1999年にようやく新WH0分類が提示され、文献的にもその臨床的ないし機能的な有用性が示されており、胸腺腫の分類もようやく落ち着いてきたと言えよう。

Key words : Thymus, Thymoma, Thymic carcinoma, 新WHO分類, Epidermoid carcinoma, Masaoka's clinical stage, CD4+CD8+ cells, Myasthenia gravis



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