山梨肺癌研究会会誌 第15巻1号 061-068(2002)

日本の肺癌検診の有効性評価

飯沼 武

論文要旨
日本の肺癌検診は結核検診の流れを引き継いで、間接胸部X線撮影を主体とする手法で長く実施されてきた。欧米諸国ではX線写真をスクリーニング検査とする検診の有効性は否定され、肺癌検診を実施している国はない。筆者らは画像診断を専門とする立場から現行の検診の死亡率減少効果に対する有効性に疑問をいだき、新しく開発されたラセンCTを用いる肺癌検診を世界で始めて発表した。とくにラセンCTを肺癌検診に特化する胸部検診CT(Lung Screening CT:LSCT)という考え方を提唱し、現在の最高級CTとは一線を画した低価格、低線量のラセンCTを開発すべきであると考えている。本稿では筆者らが考案した癌検診の数学モデルを用いて現行の肺癌検診とLSCTによる検診の外来群に対する死亡率減少効果を相対リスク(RR)とリスク差(RD)によって比較し、後者の優位性を明らかにする。今後は実証的なデータの積み重ねを行いつつ、LSCT検診に移行する方向で検討を進めるべきであることを提案する。

Key Words:肺癌検診、間接胸部X線写真、ラセンCT、LSCT、有効性



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