山梨肺癌研究会会誌 第16巻1号 034-038(2003)

肺の同時多発扁平上皮癌の1例

金澤正樹、石原 裕
安藤豪隆、河お芳正、向井惠一
小俣好作

要旨:症倒は81歳男性。血痰にて受診。胸部x線単純写真にて左上肺野、左下肺野に異常影あり。胸部CTでは、左上葉S3末梢に胸膜に接した2cm大の辺縁不整な腫瘤を認め、左下葉S9末梢には1cm大の濃度上昇を認めた。気管支鏡下に左B3b末梢より生検を行い、左S3の腫瘤は中分化扁平上皮癌と診断された。一方、左S9の病変については、気管支鏡下生検が困難で画像上は炎症性変化の可能性が高いと考えた。その他、画像上は肺門、縦隔のリンパ節腫大や遠隔転移はなく、左S9病変の部分切除と左上葉切除の予定で手術を行った。術中迅速病理診断では左S3、S9病変ともに扁平上皮癌であり、高齢、術後呼吸機能の悪化を考慮し、それぞれ部分切除とした。術後、組織学的に左S3とS9病変を比較すると、明らかに細胞の形態が異なり、同時多発扁平上皮癌と診断した。同時性多発肺癌は全肺癌切除症例中、2.5〜3.5%と報告されているが、術前診断は難しい。また切除標本においても、組織学的に肺内転移との鑑別が難しいことがあり、遺伝子学的な鑑別法も検討されている。肺内に多発性の腫瘤性病変のある症例では、安易に転移と考えず、多発癌も念頭に置き、治療方針を検討する必要がある。

key words: 同時性多発肺癌、扁平上皮癌
multiple synchronous lung cancer、squamous cell carcinoma



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