山梨肺癌研究会会誌 第2巻1号 014-018(1989)

胸腺癌の1例

中澤久美子、弓納持 勉、石井喜雄、早川直美、小山敏雄、須田耕一

概要:今回比較的稀な胸腺癌の一例を経験したのでその細胞像を中心に報告する。
症例は50歳女性の肝臓への転移を伴った縦隔腫瘍で細胞診、組織所見、免疫組織化学および電顕所見より下里らの提唱する胸腺眼と診断された。すなわち、縦隔の穿刺吸引細胞診では、比較的小型の異型性のある上皮細胞が認められ、それは著名な核小体を有し、背景にはリンパ球が認められなかった。また、肝腫瘍生検の捺印細胞診でも同様な所見が得られ、同組織診ではこの他に核分裂像が多数認められた。腫瘍細胞は免疫組織化学的にケラチン(+), Leu-7(-)で、電顕的には上皮性特有のトノフィラメントとデスモゾーム様所見が認められた。以上、本例の診断に細胞診上の細胞異型の観察はもちろんであるが、リンパ球の有無などの背景の観察や免疫組織化学的所見が胸腺癌を確定または推定する上で重要と考えられた。




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