山梨肺癌研究会会誌 第21巻1号 006-009(2008)

HCC肺転移術後に増大傾向を示した肺腫瘍に対して
区域切除を施行した一例

松岡弘泰、奥脇英人、松原寛知、宮内善広、
國光多望、進藤俊哉、松本雅彦

要旨
近年、肺癌手術において術後の肺機能温存や在院日数の短縮などの見地から、さまざまな低侵襲手術、縮小手術の試みがなされている。今回、我々は右転移性肺癌術後の左S1+2原発性肺癌に対して消極的縮小手術としてS1+2区域切除を行った症例を経験したので報告する。【症例】69歳女性、肝細胞癌の右肺下葉転移に対して部分切除を施行され、その後は再発なくコントロールされていた。右肺手術時より左肺S1+2にすりガラス陰影が認められていたが、約3年の経過で増大傾向を示したため原発性肺癌を疑い外科的生検1切除の適応と判断した。本症例では肝細胞癌の肺転移術後であることなどを考慮して肺機能温存の見地から消極的縮小手術として左肺S1+2区域切除を施行した。術後1年を経過し無再発生存中である。【考察】臨床病期1期非小細胞肺癌では肺葉切除以上+リンパ節郭清が標準術式であるが、臨床の場においては症例によって縮小手術が行われている。本症例においては部分切除よりも局所制御と診断性に優れる区域切除を施行した。また本症例は心合併症を有する両側肺切除症例であるが、周術期を含めて呼吸器全身の合併症を認めずに経過している。区域切除は本症例のような肺機能の可及的温存が望まれる症例に対しては機能温存と根治性と両立した有用な術式であると考えられた。

キーワード:肺癌、区域切除、縮小手術



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