山梨肺癌研究会会誌 第21巻1号 014-018(2008)
化学療法、放射線療法に抵抗性を示し、急速に進行した
肺原発多形癌の1剖検例
佐藤亮太 渡邉一孝 金澤正樹 西川圭一 久木山清貴
要旨:症例は61歳男性。右上背部の鈍痛のため近医を受診、胸部単純X線で右上肺野に9cm大の腫瘤を指摘された。胸部CTでは右上葉に9×8.2cm、辺縁が不均一に造影される腫瘤を認めた。当院を紹介受診し気管支鏡検査を施行したところ、ブラシ擦過細胞診にてクラスV(未分化扁平上皮癌の疑い)と診断された。右腎より下方の後腹膜に転移があり、臨床病期はT3N3M1、ステージIVだった。シスプラチン(CDDP)+ジェムシタビン(GEM)併用およびドセタキセル(TXT)単剤による化学療法を行ったが、ともに無効であった。胸壁、隣接臓器への浸潤傾向が強く、痺痛緩和目的に原発巣および後腹膜の転移に対してそれぞれ17Gy、45Gyの放射線療法を行ったが、腫瘍の急速な増大を認め初診から約4ヶ月にて永眠された。剖検にて肺原発多形癌pleomorphic carcinomaと診断され、縦隔、胸壁への浸潤、左心室、胃、腸間膜、後腹膜への転移を認めた。肺原発多形癌はまれな組織型だが、急速な進行を示し、化学療法、放射線療法ともに抵抗性である。手術不能例に対して有効な治療法の確立が望まれる。
キーワード:肺癌、多形癌、化学療法、放射線療法
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