山梨医科大学紀要 第14巻,045-049(1997)

哲学教育の中日比較
―中国の現状―

王 立波、香川智晶

 中国の大学教育の体制は中国の社会体制と密接に結びついており,強い統制をはかるシステムがとられている。その点で,形式内容ともに完全に担当する教官の自由裁量に委ねられている日本の哲学教育ときわめて対照的である。哲学教育は全国統一の教科書,指導大綱,教育検査などの特徴を有する。中国の一般教育の哲学はマルクス主義哲学である。この哲学は理論性や論理性といった長所をもち,中国では広く普及している。しかし,この哲学には,同時に,多くの弱点も指摘できる。例えば,内容の抽象性と論述の思弁性や,教育の強い政治性などである。さらに,この哲学は今なお1930年代のソヴィエトの哲学教育の影響を色濃く残していることもあって,現実の社会の変化に十分に対応しきれていない。そのため,哲学教育の改革の声がたびたびあがっているし,教科書の改訂も行われてきた。しかし,その対応はいまだ十分とはいえず,中国の経済的政治的な急速の発展にともなった哲学教育の改革がさらに期待されることを指摘した。

キーワード:哲学教育,中国,マルクス主義



Comparison of China and Japan in Philosophy Education

Liber Wang, Chiaki KAGAWA

 Teaching methods of philosophy education in China and Japan are fundamentally different. In Japan philosophy education is relevant to the teachers' personal interest and the students' daily life. In China philosophy education is overwhelmingly influenced by the Soviet Union Marxism-Leninism in the1930s. There are problems of the disparity between the Chinese system's restrictiveness and the social challenges of modern students which result in a considerable loss of the Chinese students' interest.



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