「いのち長き時代に」
朝日新聞社会部著 勁草書房 1998

紹介者:新田 静江教授
(山梨大学医学部看護学科)

今回,学生にすすめたい本として『いのち長き時代に』を選択しました。この本は,朝日新聞社会部が高齢者をとりまく人々を取材して1997年に約1年間朝日新聞に掲載した記事をまとめたもので,当時大きな反響が寄せられたシリーズでした。

およそ270ページ余りのこの本は,8つの章で構成されていています。第1章「生と死と」と第2章「終末の選択」では,高齢者の意志を尊重して自宅あるいは福祉施設で死を迎えさせるまでの周囲の人々の苦悩と充実感,回復の見込みのない病状にある高齢者の延命治療と尊厳死の選択に戸惑う家族の苦悩などが綴られています。第3章「ある絆」では,深刻な健康問題で苦しい状況にある見ず知らずの人々がインターネットを通し相互に激励しあっている状況を,第4章「父よ母よ」では家族介護で家族関係が崩壊したり親密になっていった様子が表されています。第5章では,能力や役割の喪失感,子に迷惑をかけないで生きる決心,孤独感,痴呆への不安などの「こころ模様」が記載されています。第6章「女と男」では高齢者の恋愛や癒されない夫婦間の傷が,第7章では「帳面」に記された老いや死の受容が,第8章では老親への「憎愛」の歳月を経て穏やかな状況に至った様子などが報告されています。

高齢者社会の到来はただ単に限られた人々にとって深刻であるだけではありません。この本に実話として登場する親子,夫婦,兄弟は,身近にいる人々や明日の自分を物語っているといえるでしょう。若い学生の皆様が,この本『いのち長き時代に』を読むことは,己の生き方について,親兄弟について,結婚について,社会について等を考える良い機会になると思われます。

初出:山梨大学附属図書館報「やまなし」創刊号vol.1(2003.6.15) 「学生にすすめる本」より

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