山梨肺癌研究会会誌 第17巻2号 102-106(2004)

膵癌手術5年後に孤立性肺転移を認めた1症例

櫻井裕幸, 羽田真朗, 小山敏雄, 宮坂芳明, 中込博, 三井照夫, 芦沢一喜

要旨:症例は63歳,女性.2003年9月検診にて胸部異常陰影指摘され, 精査目的に当院紹介となった.59歳時, 膵癌の診断にて胃幽門側温存膝頭十二指腸切除術の既往があった.膵癌の病理病期はU期(T2N0M0)であった.胸部X写真では左下肺野に結節影を認め, 胸部CTでは左下葉S9領域に径1.6 cm大の辺縁不整で, 棘状突起を伴い, 軽度の胸膜陥入像を呈する結節を認めた。気管支鏡下の生検では確定診断を得られなかった。しかしながら,肺悪性腫蕩を完全に否定できなかったため,2004年2月4日, 診断およぴ治療目的に手術を施行した.術中迅速病理診断にて腺癌の診断(肺原発か転移性かの鑑別は困難であった)を得た後, 原発性肺癌に準じ, 左肺下葉切除術と肺門縦隔リンパ節郭清を施行した.切除標本の病理紐織学的診断は管状乳頭状腺癌の所見で, 一部に粘液産生を認めていた.腫亀の辺録では肺胞上皮置換性の発育を示していた.ヘマトキシリンエオジン染色の所見は既往の膵癌の組織像に類似し, また, 免疫組織化学的所見では肺の腫蕩はThyroid transcription factor 1陰性、Surfactant apoprotein陰性であり, また, 既往の膵癌と肺腫瘍の両方において, P53およぴCarbohydrate antigen 19-9が同様の染色性を呈し陽性であった.以上より,切除された肺腫瘍は既往の膵癌の肺転移と病理診断された.膵癌からの転移性肺腫瘍の切除例は極めてまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.

keywords : 転移性肺腫楊,外科切除,肺悪性腫雛,腺癌



論文PDFファイル (509KB) はここをクリックしてください
Full Text PDF File (509KB)




目次・Contentsに戻る