山梨肺癌研究会会誌 第3巻2号 074-079(1990)
喀痰細胞診における肺癌疑陽性例の検討
中澤久美子、弓納持 勉、石井喜雄、早川直美、長田美智子、貴家 基、茂垣雅俊、須田耕一、小沢克良
概要:喀痰細胞診において比較的同様な出現パターンを示した2例の肺癌疑陽性例を報告する。症例1は43才男性で咳嗽と喀痰を主訴とし、胸部X線で両側の上中肺野外側に異常陰影が認められた。また、末血で好酸球の増加が見られ喀痰細胞診では背景に好酸球を伴った腺由来の異型細胞が多数見られClass III とした。その後数回の細胞診の提出により異型性は低下しClass I となった。本例は、気管支喘息に合併したPIE症候群と診断された。症例2は62才男性で症例1と同様に咳嗽、喀痰を主訴とした他に右背部痛があり、喫煙指数は560であった。入院時喀痰細胞診はClass I。胸部X線では右下肺野に均等な異常陰影が認められた。治療により右肺外側に陰影が残ったが、臨床症状の改善が見られたため退院し外来にて経過観察を行っていた。この間、喀痰細胞診で症例1と同様な異型細胞が認められClass III とした。その後異型性は増加し、また生検によりadenocarcinomaと診断され、手術になり最終的にbronchioloalveolar cell carcinomaと診断された。
以上より、喀痰に異型細胞が見られた場合、その背景にも十分注意し、また繰り返し細胞診検査を行うことが重要である。
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